1.はじめに
別記事で親子向けにミニ四駆のキットの選び方と、キットのまま無改造で作る際のお勧めの工具類を紹介しています。
今回、ミニ四駆のキットを一台準備して実際に作りながら、ちょっと真面目に「丁寧な素組みマシン」の作り方を紹介します。
昔から言われていることですが、丁寧に作られたマシンは速いです。
でも初心者の場合、「丁寧」に作るってどういう事??ってなると思います。
ミニ四駆界隈で言われる「丁寧」は、「コツ」や「ノウハウ」って呼ぶべきものかも知れません。
私の知っている範囲になりますが、少しでも「丁寧」の意味が伝われば良いなって思い、記事にしてみました。
【今回作ったニューマシン】

作り方の大きな流れは、次のようになります。
1)仮組み(ギヤの歯面には潤滑剤をつけません)
2)慣らし運転(ギヤの当たり出し)
3)本組み(ギヤの歯面に潤滑剤を塗布)
4)慣らし運転(潤滑剤の馴染ませ)
5)タイヤの面出し
6)ボディーの組み立て、シール貼り、クリア吹き
7)完成
2.キット紹介と前準備
2.1 今回作ったキット
今回選択したキットはMAシャーシの「ヘキサゴナイト BLACKスペシャル」です。
なんちゃらスペシャルや、なんちゃらリミテッドって名前のキットは基本的に期間限定販売のもので、お得感の高いパーツが付いていることが多いのでお勧めです。
ヘキサゴナイトBLACKスペシャルは、特にスーパーハードの小径ローハイトタイヤが標準装備になっている点がポイント高いです。
2.2 前準備(下ごしらえ)
1) ボディー
ゲートカット跡やバリで気になる所があれば、デザインナイフやダイヤモンドやすりで修正しておきます。
その後、食器用の洗剤を使って表面を洗い、乾燥しておきましょう。
ステッカーが剥がれにくくなったり、塗装する場合に塗料の付きが良くなります。
2) シャーシ
まずシャーシのネジ穴になる所にタップを使ってM2の雌ネジを切っておきます。
一手間かけてこの「下ごしらえ」をしておくだけで、小さなお子さんでも凄くミニ四駆が作り易くなります。
使うタップはM2用の0.4mmピッチ(上タップ)です。
後々の改造の際にも雌ネジ切りしてあると作業がはかどるので、今回使わない穴も含め全部の穴を雌ネジ加工しておきましょう。
3.組み立て
前準備でボディーを洗って乾燥中だと思いますので、ボディは一番最後に作りましょう。
シャーシ側の組み立てからボディーの仕上げまで、それぞれでのポイントを解説します。
1)ローラー
ローラーはコースの壁に接触した際にスムーズに回転しないと走行が安定しなくなるので、ローラーの側面全周をダイヤモンドやすりでヤスリがけします。
指で触って、引っかかる所があれば、綺麗に慣らしておきましょう。特にゲートカットした所が凸になり易いです。
2)ベアリング
キット付属のプラスチック製ベアリングをシャーシに取り付けた際、きちんと奥まで入ると下の写真の青丸印のようになります。
もし取り付けた際にシャーシからベアリングが飛び出していたら、ベアリングの外周や上下面でゲートカット跡などが凸になっていると思います。
しっかり取り付けできるように、ベアリングのゲートカット跡をローラーと同様にダイヤモンドやすりで整えましょう。
周方向だけでなく、上下面方向にも凸部があれあダイヤモンドやすりで整えましょう。
お子さんが作られる場合、ベアリングがシャーシにちゃんと入っていなくて、遅いマシンになっていることが時々あります。
3)ホイール
もしホイールのシャフト取り付け部が下の写真のようにフラット形状ならば、ホイールのシャフト取り付け穴の付近の外周の面取り加工をします。
(ホイールの形状によっては、この工程は不要です。)
ベアリングとホイールの端面が接触した際にホイールのエッジで擦れると、マシンが遅くなります。
また後々、ベアリングを620ボールベアリングに交換した時にはベアリングの内輪にしか接触しないようにする必要があります。
残しておくフラット部ですが、「2mmワッシャー小」くらいのサイズが残るくらいまで面取り加工しましょう。
4)シャフトとホイールの取り付け
シャフトをホイールに取り付ける際のポイントは、回転ブレを小さくなるようにして、さらに走行中に外れにくくすることです。
シャフトの取り付け方向の選定方法については、モノグリーンさんの動画でかなり詳しく紹介されていますので参考にしてください。
私は下のような状態で手でホイールを回転させてホイールのブレチェックをしています。
シャフトをホイールから抜く時に、シャフトを曲げてしまい易いです。力が必要ですが、注意しながら慎重にまっすぐ引き抜きましょう。
シャフトとホイールの固定は、色々な方法が提案されています。
私はシャフトの挿入部をダイヤモンドやすりで少し荒らした後、マッキーなどの油性ペンで黒塗り(塗膜作り)してわずかに肉盛りしてから取り付ける方法で固定しています。
これと同じ方法でモーターとピニオンギヤも固定します。
この方法は一軸マシンのプロペラシャフトのギヤの固定にも使える便利な方法ですので、ぜひ覚えておいてください。
(プロペラシャフトへの応用についてはNOIRさんの動画で詳しく紹介されていますので、気になる方は見てみてください。)
5)タイヤの取り付け
タイヤはちゃんと固定しておかないと、走行中にホイールから外れてしまう事故がよく起こります。
プラスチック製ホイールは、金型からの抜き勾配がついていて先端に行くほど細くなっています。
このままタイヤを取り付けるとタイヤの接地面が結構傾いてしまい、コースと上手く接地できません。
これら2点への対策として、5mm幅の両面テープをホイール先端側に一周貼るのがポイントです。
先端側のみに両面テープを貼ることでホイールの傾きをかなり補正できます。
ホイール全面に両面テープを貼っていませんが、これで十分しっかりタイヤを固定できます。
タイヤのパーティングライン(金型の合わせ面跡)がある側を外側になるように装着した方が接地面が水平になり易いのでお勧めです。
6)シャーシへの潤滑剤塗布
オイルペンでのオイル塗布と、綿棒によるグリース塗布を使い分けます。
スムーズに回って欲しい所はオイル塗布、回って欲しくないけど回ってしまう所は綿棒を使ってグリース塗布します。
グリースはオイルよりも粘度が高いため、オイル塗布した所が優先的に回るようになります
オイル塗布は「軽く一塗り」が基本です。全体に満遍なく塗る必要は全くありません。
一塗りでもつけ過ぎくらになります。
こんなに少なくて大丈夫かな!?って心配になる程度でも、実際にはまだ多いくらいです。
一部分に一塗りして、2回目の慣らし運転で、潤滑の必要な所全体に行き渡らせて馴染ませます。
[注意]この段階ではギヤの歯面には潤滑剤をつけないこと!!
潤滑剤を付けてしまうとギヤの当たり出しの慣らし運転に数十時間単位の途方も無い時間が必要になります。
もし歯面に潤滑剤を付けてしまったら、サーキットで一杯走らせて気長に慣らし運転していきましょう。
7)ローラーへの潤滑剤塗布
オイルペンでローラーの内径、両端面にのみオイル塗布します。これも極少量付けて、軽く回して全体に馴染ませましょう。
キッ素組の場合、適量塗れれば、手回しで空転1秒〜2秒弱くらいになると思います。体感で空転時間が0.5秒くらいあれば、ひとまずは上手く塗れた方だと思います。
逆に空転が体感0.5秒も無いくらいなら、明らかにオイルを付け過ぎです。
お子さんがこのレベルでの組み立てをされる場合、オイルペンでオイル塗布して綿棒で軽く拭き取れば、まずまず良い感じになるかと思います。
ローラに潤滑剤を塗りすぎると、間違いなく遅くなります。
子供達のマシンで遅い子のマシンは、ローラーの潤滑剤が多すぎることが原因になっている事が多いと思います。
8)モータへのピニオンギヤの取り付けとギヤ加工
タイヤシャフトとホイールの固定に使った方法でモータとピニオンギヤも固定します。
ピニオンギヤの先端は軽く面取り加工しておくと良いと思います。これはおまじいみたいなものですので実施は任意です。
お子さんのマシンの組み立て進行待ちの時とかの空き時間があれば、実施してみましょう。
ピニオンギヤの加工の意図ですが、ピニオンギヤの相方になるカウンタギヤは走行中に結構暴れます。カウンタギヤが暴れた場合でもしっかりパワーを伝えらえるようにエッジを落として、かみ合いをしっかりさせようと言うものです。
- モータシャフトのピニオンギヤ取付部をダイヤモンドやすりで軽く荒らす
- 油性マジックで黒塗り(インク塗布)
- ギヤ取付後、ギヤ端面の面取り加工(時間があれば実施)
9)タイヤの面出し(任意)
ノーマルキットの素組みではほとんど効果が出ないことが多いですが、理屈としては有効なため、時間があればやっておいた方が良いものです。
タイヤの面出しは、上級者の使うペラタイヤの速い理由の1つだと思います。
無加工のタイヤにはゲートカット跡の凸部、パーティングラインの段差やバリがあり、またホイールの抜き勾配に由来する傾きも発生するため、路面とちゃんと接触できません。
そうするとしっかりとタイヤがグリップできず、加速力が悪くなり、遅くなる原因になり得ます。また実車のタイヤでもそうですが、タイヤの表面が一皮むけると本来のタイヤのグリップ力が発揮されます。
タイヤの面出しですが、ダイヤモンドやすりを軽く当てて、優しく3回程度擦れば、パーティングラインはほとんど目立たなくなると思います。始めはこの程度で良いです。
ゲート跡はなかなか除去し切るのは難しいので完璧を目指す必要はないです。
加工前と面出し後の感じが分かるように下に写真を載せておきます。
いきなり沢山削るとタイヤの形が真円から崩れてしまいます。完成後、走行させながら、全面当たりするまで少しずつ面出しを進めましょう。
10)慣らし運転(ブレークイン)
慣らし運転は、ギヤの当たり出しと、潤滑剤の馴染ませ目的で各5〜10分の計2回実施します。
慣らし運転の時、振動でマシンがズレていってしまうのですが、ミニ四駆キャッチャーがあれば便利にできます。
(さんちゅうさんが動画の中でブレークインをする際にミニ四駆キャッチャーを使っていました。今回、真似してみたら慣らし運転が快適でした。これ良いですね)
【慣らし運転の光景】

11)ボディーのステッカー貼り&クリア吹き
ボディーにステッカーを貼ったら、クリアを吹いておきましょう。
ステッカーが剥がれにくくなり、カッコいい状態を長く保ち易くなるのでお勧めです。
クリアは2〜3回に分けて少しずつ吹いて厚くしていくと良いです。
1回目、2回目は薄く塗る感じで、少なめに軽く吹きましょう。2〜3時間開けて、しっかり乾燥させてから吹くと、上手く仕上がりやすいと思います。
私は雨の日を避けて薄めの重ね塗りをしているためか失敗したことはないのですが、湿度が高い日に吹くとクリアが白濁する場合があるそうです。
4.ジャパンカップジュニアサーキット(JCJC)でのタイム
参考として、JCJCを連続走行させた際の3周1セットでのタイムを載せておきます。
使ったバッテリーの電圧は2.63〜2.65Vです。
タイムはスマートフォン用アプリのLapTimerで計測しました。
始めの3周は5秒台前半、以降の3周は4秒後半でした。
潤滑剤を塗った方が速いのは当たり前と思われるかも知れませんが、実は潤滑剤を塗りすぎると、潤滑剤なしの時よりも遅くなることが多々あります。
グリースを一生懸命塗った子のマシンが遅くて、グリースを塗り忘れた子のマシンが1番速いってことが起こります(笑)
なおJCJC3周での0.2秒は結構な差です。競争した場合、圧勝に近い差が付くタイム差です。
潤滑剤なしの場合、磨耗してパーツが早くダメになってしまいますので、潤滑剤は必須です。
潤滑剤を最適量塗れるようになるのがレベルアップの第一歩です。
こまめにメンテナンスして、つど最適量の潤滑剤を補給してあげましょう。
ちなみに電圧を少し低めに設定したバッテリを使いましたが、フル充電後のMax電圧のバッテリを使ったらもっと速くなります。
フル充電ではありませんが、参考に手元にあった2.73V時の結果も載せておきます。速度はバッテリ電圧だけでもかなり変わります。
【ギヤの当たり出し後】

【潤滑剤馴染ませ後】

【2.73V時】

5.さいごに
少し詳しく素組みの時の「丁寧」な組み立て方を紹介させて頂きました。
お子さん達と一緒にミニ四駆を作ると、パパさんは結構待ち時間が発生することがあります。
その時は、「丁寧」に作り込むことで時間調整してみてください。
あんまり「丁寧」に作りすぎると、JCJCくらいのシンプルなコースではお子さんとのレースの際、大人気ない結果になるかも知れません(笑)
その場合は、早めにサーキットに遊びに行きましょう。
ちなみに上のJCJCのタイムですが、ドノーマルのキット素組ノーマルモーター車としては結構速いタイムだと思います。少なくとも我が家の最高タイムでした。今までは息子が作ったVZバンキッシュの5.2秒台が最速でした。
またネットに挙がっているドノーマル車のJCJCタイムは、5.2〜7秒くらいのようです。
ん〜。良いマシンが出来ました!
6.後日談
その後、行きつけのサーキットでシェイクダウンを兼ねて少し走らせて来ました。
で、メンテやら何やらゴチョゴチョいじった結果、少し遅くなってしまいました。
サーキットで走らせて傷んだフロントシャフトとフロントのカウンタギヤのシャフトを交換して、駆動部、ローラー周りの清掃と潤滑をやり直しただけなんですが、ベストセッティングは難しいですね(笑)